企業理念と技術者倫理

転職のためにいろいろな会社で面接をうけているのだが、よく落ちるw。エンジニアとして誠実であろうとすると、会社の方針と反してしまうというのが理由の一つらしい。

面接をしている人事担当者が言うには、「エンジニア視点というよりは、経営者視点で物事を考えて欲しい。」とのことなのだが、この経営者視点が具体的にどういうことかというと、

プロジェクトで利用することになっている自社製品があまり使い勝手や性能の良くない製品であり、代わりの良い製品を知っていても自社に利益が出る場合は、口をつぐんでいる必要がある。

ということらしいw
あるいは、

間違った開発手法、開発プロセスが取られていても、それはお客様の意向なので、信頼を得るためには従わなければならない。
たとえ、ソースコードの履歴をコメントアウトで残すような手法であってもだ。

とかw

そりゃエンジニアが軽視もされるし、疎ましくも思われるだろう。正論を述べるエンジニアほど利益を第一とする会社の敵になっちまうんだから。


会社のホームページなどに掲載されている経営理念では「顧客満足度を第一に考えています。」といいながら、
「こういった局面に立たされた場合でも、ちゃんと顧客にメリット・デメリットを説明したうえで選択してもらいたい。」
という意見を述べると、私の面接をしている人事担当者からは決まって
「まずは会社の存続を考えなければならない。」
という台詞が出てきた。ずいぶんとまあ立派な経営者視点ですねw*1

「まずは会社の存続を考えなければならない。」という言葉を裏返すと、
「会社の存続を守るためには顧客を多少犠牲にしてもよい。」という本音が透けて見えてくる。


会社を作ったことも、プロジェクトリーダーをやったこともないへたれプログラマだけども、企業理念って利益を守るために曲げてもいい物なのか?と問いたい。

客にとって不都合な事実を隠蔽して、それでもプロといえるのか?
おまえらの経営理念ってそんな程度のものなのか?
その程度の顧客主義なのか?
その程度の覚悟で仕事をしているのか?


経営理念.例.企業ビジョン[経営理念と経営基本方針]からの引用になるけれども、

 企業は環境等の変化により常に変化を求められ、これに変化に対応できなければ市場からの退場を余儀なくされます。しかし、その一方で企業には『変わってはいけない』側面も存在し、どのような環境になろうとも揺らいではいけないものが経営理念になります。経営理念は社員とのコンセンサスを得たもので、会社の憲法でありますので、情勢の変化やトップの交代により変更される事もありますが、基本的には変更はされず永続的に具現化されて行くものとなります。

企業理念は会社がつぶれるような、本当に難しい局面に立たされたときにこそ守らなければいけないものなんじゃないのか?


日本の会社って、海外ニートさんの言うように、定時出社当たり前、残業当たり前、予定を調整して休むのが当たり前、とか社員に高い労働倫理を求めるけれども、こういった技術者倫理やプロとしての倫理を求める事はまず無い。

いや、逆にそういったプロとしての倫理を持たせずに、まずは利益を考えさせるというところが多い。
消費期限の偽装、リコール隠し、データの改ざん、これまでに不祥事を起こしてきた会社は数え切れない。そして、そのほとんどが「利益を守るため」とか言ってたような気がする。


人間のやることだから多少の間違いや手抜きはあるだろうが、
利益を確保するために情報を隠したり、脚色することはエンジニアとして誠実な態度なのだろうか?

たとえば、システムのテストの結果が悪かったのを利益確保のために隠蔽したら、
たとえば、性能測定の結果が多少悪かったのを脚色したら、
たとえば、進捗が多少遅れているのを遅れていないように報告したら、
いろいろあると思う。


こういったごまかしのどこまでが許容範囲で、どこからがアウトなのかという線引きができるのだろうか?
そして、それがエスカレートしないという保証ができるのだろうか?


ありのままを率直に述べることができなくて、プロジェクトの本当の進捗ってみえてくるんだろうか?
ほんのちょっとのつもりがいつの間にかとんでもない遅れになってないか?
ほんのちょっとのごまかしがとんでもない間違いになってないか?


俺は一人のエンジニアとして技術者倫理を守れる会社で働きたい。

*1:品質第一と掲げながら、品質が悪くても納期を伸ばさずに納品していたのはどこの会社だったか。